ＤＤＴを買って家に帰ると　母は既に天井の蜘蛛の巣を取り払い　柱の蜘蛛の巣に取りかかっていたが
　其の手を止めて今　買って来たＤＤＴを　私達の着ている下着や　畳の上に撒いた・・・
　　箒を逆さまにして　畳の上を　トントントンと叩いて　畳の目に潜り込んでいる埃も畳の上に出して
　　　ＤＤＴの粉末が　畳の目の中にも入る様にして置いて　又　蜘蛛の巣払いに戻った・・・
　
姉と私も棒に布を巻いた物で　背の届く蜘蛛の巣を取り除いた・・・　面白い様に　蜘蛛の巣は
　布に絡まって取れた・・・　茶殻やＤＤＴの撒かれた畳の上や廊下を　綺麗に掃き　
　　窓ガラスや　障子の桟も良く拭いて　最後に　トイレ掃除をして室内の掃除を　ほぼ　終える
　　　事が出来た！　

「ああー　やっと終ったね！　ご苦労さん！」「お母ちゃん　お部屋の中　綺麗になったネ・・・！」
　「気持ち良いネ・・・！」　「じゃあ　貴方達は　休んでなさい！　お母ちゃんは　夕飯の支度
　　　するさかい・・・」「うん！」「はい！」　姉も私もかなり疲れて　畳の上に　ごろん　と
　　　　横になった・・・　母はもっと疲れて居る筈であるが　私達の為に　戴いたお米や　野菜を

使って　夕食を作ってくれた・・・　しかも台所は無く　外に出て七厘に火を熾し　蓋の閉まらない
　ベコベコのお鍋で　大根や人参を炊き　そのお鍋でお米を磨ぎ　お粥を作ってくれた・・・
　　（当時　既にお米は　貴重品で少しでも長持ちさせる為に　殆どの家が　お粥を食べていた。）