午後から父を船の出港する舞鶴迄日の丸の小旗を振りながら送って行った.
舞鶴の埠頭まで一里の道を歩かねばならない! 途中で歩き疲れた私は、
「お父ちゃん!おんぶ!」「いいよ!おいで!」と 父は おんぶしてくれた。
父の背中は、しっかりと私を受け止め、その感触を覚えておこうとしている様
で、 暖かかった・・・。
その様子を見ていた母が「紀ちゃん! 帰りは おんぶ や 抱っこ!って
言うんじゃあないのよ!!」 「はい!」 華奢な母である!
一里の道を私をおぶって歩くのは、無理である!
父は 船上の人となった!
ボ~~~ 汽笛の音と共に船は ゆっくりと動きはじめた!
大勢の人達が手に手に日の丸の旗を振りながら見送りに来ていた !
『行ってらっしゃ~い!』 『必ず 帰ってきてね~!』 『元気でね~!』
『紀ちゃん! 黎ちゃん!お父ちゃんの顔をよーく見ておくのよ!』
「はいっ!」と言って母の顔を見上げて驚いた! 泣いているのである!
涙は、頬を伝い地面に ; ポタポタと流れ落ちていた!!
「どないしたん?おかあちゃん・・・? お父ちゃんもう
帰って来はらへんの・・・?」 「 お父ちゃん!何処へ行かはるの・・・?」