此の後、床についたが、二人共眠れない・・・！　終バスは、もうとっくに行って
仕舞った筈である。「お母ちゃん　何してるんやろ～」

その頃母は、電燈も付いてないバス通りの山道を、家に向って歩いていた・・・！
ー早く帰らないと、あの子達が、心配して眠れないで、待っているかも知れない－
ーそれにしても、暗くて、暑い・・・－　背中にしょった　地下足袋の入った
リュックが、肩に食い込んで、重くて痛い・・・！

此の頃、貯金はもう全く無く、地下足袋の売り上げだけが、頼りだった・・・！
１日に２足の地下足袋が売れないと、親子３人食べて行けない！
此の日、地面に広げた小さな路面店で、１足は、直ぐに売れた。
２足目も直ぐに売れるだろうと、思ったが、中々売れない・・・。

８時の終バス前に来た客が、買いそうで、中々買って呉れない・・・！
結局、終バスは、出て仕舞い、歩いて帰らねばならない。でも未だ地下足袋は、
１足売れただけ・・。何とかもう１足売らなければ・・・！
１時間粘ってやっと１足売れた！　子供達の待ってる家に急がねば・・・。
この夜、母は、一里の暗い山道を歩いて帰って来たのである・・・！