家に着くなり私は、有りの侭を母に話した。母は、黙って聞いていたが、意に反して、
途中から涙を流し始めた！「戦争さえ無かったら蛇まで食べなくても良かったのにネ！」
母は、その農家の方達も、私も可哀想でならないと言うのだ。でも美味しかったよ！
と私が言うと、「紀ちゃんは、殆ど美味しいものが無い時代しか知らないからね、
本当に美味しい物の味が解からなくて何を食べても美味しく感じるのでしょうね！」

そして、母は、昔、お侍さんはね！貧乏で何も食べられなくても
「武士は、食わねど高楊枝！」と言ってね、お腹が空いていても、食べた振りをして、
爪楊枝咥えて我慢していたものなのよ！貴女の様に物欲しそうに　ひろひろするのでは、
ありません！！　お母ちゃんが何時も言っているでしょ！食事時や食事の準備を
し始めたら、ご迷惑にならない様に直ぐに帰りなさいって！！
何処のお家も今は、食べる物が無くて大変なんですからね・・・！　私は、ぐ～の音も
出なかった！あの時「うめ～もの」に私の足はその場に釘付けに成ったのだから・・・！

当時　大百姓といえども、お米や野菜はあっても、魚や肉は、皆無といってよかった。
仕方なく　蛋白質源は、蛇や蛙　ザリガニやバッタやいなご等の昆虫までも
が食材になり、食べられる物は、何でも食べた。当然の事ながら、お腹をこわし、
時には、毒キノコを食べて命まで落したり、笑いが止まらなくなったり・・・。