２月にはいって、庭の梅の花が咲き、「キェキョキェキョ、ホ～～～ホキェキョ！！」と
朝早くから鶯がやって来て、澄んだ綺麗な声で鳴いていた。私は一年を通じてこの時期が
大好きだった。私の生まれた月でも有り、一番寒く厳しい月だが、やがて来る春の訪れを
いち早く感じさせてくれる優しさを可憐な梅の花と鶯の鳴き声の中に感じていたから・・・。 
        
                                 
            

そんなある日、父方の遠い親戚から「娘が結婚をするのだが、こんな時代だからお金も無く
結婚式に着る着物が無いので、美祢ちゃんが衣装持ちと聞いていたので、其れらしい
着物を貸してやって欲しい・・・。」との手紙が届いた。母は、直ぐに自分が新婚旅行
の時に着た一番上品で高価な振袖の訪問着とそれに合う帯や帯締め等の小物も揃えて
一式を贈った。（この事が後になって幸を奏する事になる。）