夏休みになって、姉と私は、以前の手巻きタバコと封筒貼りの内職をする
様になった・・・。 しかし、母も女学校が夏休みの為この間は収入はゼロになる。
学校ではお金の要る事ばかり・・・、姉も私も春の遠足には行かせて
貰えなかった！ お弁当や交通費に掛るお金が無かったからである。

夏休みがあけて２学期になると直ぐに 遠足と運動会が待っている。
殆どが農家の子供達で、お弁当には、美味しそうなお握りやゆで卵
等が入っていた。姉と私は、何時も蒸かした薩摩芋だけだった。楽しい筈の
遠足や運動会も 姉と私にとっては、馬鹿にされたり、爪弾きにされて、
楽しくなかったのである・・・。

母は、精神的にも体力的にもかなり疲れていた・・・。身体も痩せ細り、
誰の目にも病気では・・・？ と思う程の痩せ方だった！雑貨屋さんがその様子を
見て母に大きなガラスの瓶と氷砂糖と日本酒を手渡し 「美祢ちゃんとこに梅が
成とるじゃろ！あれを梅酒にして飲むと、ぼっけ～（トテモ）身体の為に
ええんじゃと、此処に作り方が書いてあるけん、作ってみんしゃい！！」と

母の身体を心配して、くださった。 母は、早速紙に書かれた作り方を見ながら、
梅の実を採って井戸水で綺麗に瓶と一緒に洗い 瓶の中に氷砂糖と梅と日本酒を
入れて、セロハン紙とハトロン紙で密封し、たこ糸でグルグルと 縛った。