母は、今勤めている靴メーカーに入社して１年と３ヶ月程になる。
当時は、下駄を履いていた人が大半だったが、少しずつ靴を買って履く人も増えて来ていて、
会社も徐々に収入が増え、母にもほんの少しだが賞与（ボーナス）が出た。

１２月分の茶封筒に入った給料と賞与を其の侭手作りの手提げバッグに入れて、
帰路への電車に乗った。賞与が入った事で心は浮き浮きしていた・・・。
毎年恒例の姉と私に新しい下着を買い、皆にも何か喜んで貰える物を買って帰りたい。
何が良いかな～～～？等と考えていた。

そうだ！鯛がいい！あまり高くなければ鯛１匹買って帰り、焼けばいい！
そして、正月三が日の間は睨み鯛として手を付けないで貰って・・・。
そんな事を考えながら電車を降りた・・・。
「奥さん！やられたんとちがいまっか？」と後ろから男性の声！

えっ！？と思いその男性の指差す手提げバックを見てビックリ！！
パックリと何か刃物ですぱっ！と切られた後が見え、慌ててその中を手で探って見た。
無い！！財布も給料袋も・・・。やられた～～～！　どうしよ～～～！
母は、その場にへなへなと座り込みそうになったのをやっとこらえて、
取り合えず、警察へ行かなあかん・・・。（この当時　盗られた物は殆ど帰っては
来なかった・・・。）

 
何時ものお給料日には、スリや窃盗等に盗られない様に帯の内側のボケット状の
中に入れるのだが、何時もより厚みが有り胸の下が膨らむので、返って危ないと思い
手提げの中に入れたのが矢張り馬鹿だった！！