舗装されていない、でこぼこ道をトラックに１時間ほど揺られて、帰還兵の家族は
皆トラックから降ろされた・・・。降りる時も私は、出来るだけ父の顔を見ない様にして
父に頭だけ下げてトラックの荷台から降りた・・・。

父も一緒に中川さん宅に帰るものと思っていた私は「お母ちゃん！なんで兵隊さん達は
トラックから降りはれへんの・・・？」と聞いてみた。
「兵隊さん達はね、長い間捕虜になって大変な重労働をされて、身体を壊しておられる
から、其の侭病院に入って先ずは検査を受けないと駄目なんですって！」「ふ～んそうなんや・・。」

「戦争の時、銃で撃たれてちゃんと手当してない為に骨まで曲がって仕舞った人や
ロシアの極寒の気候に侵された人や、家畜用の食べ物を食べさせられたり、鉄錆びたお水を
飲まされたりで、殆どの人が酷い病気にかかっているらしいのですよ！　気が付いた思うけど
お父ちゃん酷い太り方してはったでしょ！　あれも病気の一種らしいんですよ・・・！」
（そうやったんや・・・。病気のせいやったんや・・・。）