父は仮眠から目覚め、おばさんと母が作った炊き込みご飯(お米の中に麦が４：６位の割合で
混ざったもの）を「美味しい！美味しい！」を連発しながら食べ、「少し元気になったから
病院へ帰ります・・・。これでは、食い逃げですな～～～、ははは～～～。」といいながら
病院に帰って行った・・・。その後ろ姿はひょろひょろで元気が無さそうだった・・・。

お正月に父がやって来た・・・。長い間戦地と捕虜収容所で、ろくな物しか食べていない父、
中川のおじさんが病院でも大した食事は出ていない事を知っていて是非おせち料理を
父に食べさせて挙げたいとの配慮からだった・・・。とは云っても戦後やっと５年経った頃である。
大した食材は揃わない。身体を形成している要素は、骨と肉と血液と水とビタミンである。

これらの要素が全て欠乏しているのが父の身体であった！
その頃、配給品の中に「鯨の肉」が加えられる様になっていた。最初この肉が配給された時
国民は驚きと共に大喜びだった！！　しかし実際に食べてみると硬くて臭くて酷い肉だ！と
思った。皆は、肉と言えば牛肉だと思っていたから・・・。しかし、母親達はこの鯨を如何にすれば
柔らかく臭く無い食事に出来るかを考え何とか欠乏していた蛋白質の摂取に成功していた・・・。