この日の夕食が済んだ頃，お隣の中村さんが来られて、「これ、少しですけど嬢ちゃん達に
挙げてください。」と言って日本では見た事も無い綺麗な英語文字の書かれたカンカンを母に
手渡した。「んま～これ、舶来品のドロップですね！こんなお高いものを・・・。」

闇市場でないと手に入らない代物である・・・。「いや、実は私、進駐軍関係のお宅で家政婦
していまして、時々そこの奥さんに珍しいアメリカの食べ物や色々と頂くんですよ！それで、
おすそ分けに・・・と思って・・・。」「んま～そうでしたか、有難う御座います。
道理で何時も身綺麗にしてはるんですネ！」

当時日本の主婦は、安物の生地の古汚い割烹着を身に付けていたが、中村さんは何時も
真っ白に洗濯され綺麗にアイロン掛けされ、ポケットや裾に刺繍やレースの付いたエプロンを
身に着け、何時もお風呂上りの様に清潔感溢れる装いをされていた。

うちにもお嬢ちゃん達と同じ位の娘がいるんですよ！一人っ子ですから遊びに来てやって
くださいね。」「そうですか　一人っ子やったらお寂しいですわね！どうぞ　うちにも来てください・・・。」