べート－ベン　おじさん！は、　毎週日曜日の９時頃になると、歯を磨いたり、顔を洗ったり
洗濯をしながら大きな声で気持ち良さそうにカンツオーネを歌っている。其のほとんどは未だ私の
知らない曲が多かったが、時のは、「荒城の月」だったり「さくら、さくら」だったり、学校で
習った曲も歌っていたので、そんな時は私も部屋の中で一緒にちいさな声で歌っていた。

(普通に歌うと、ご近所の迷惑になるから・・・。と母にきつく戒められていたから・・・。）
ある日曜日、私は思い切っておじさんの近くまで行って「おじちゃん！歌、物凄く上手ですネ！」と
言ってみた！おじちゃんは、「そうか！おおきに・・・。」と言って嬉しそうな顔をしてくれた・・・が
直ぐに又真剣な顔をして歌い始めた・・・。　トテモ威厳があり、怖くは無いが重厚な存在感の在る
表情だった！

この事を母に話したら、「ひょっとしたら、あのおじちゃんは、オペラ歌手の専門家で、舞台で歌って
いる人かもしれへんね・・・！」「へ～～　凄い！やっぱりな～～～。そうやとしたら、ここのアパート
の人達は、唯でオペラ聞かせてもらってる事になるねんな～～！」

ベートーベンおじさんは、あまりアパートの住人とは付き合いをしない人で、その後半年位で
秘かに越されて行って仕舞った・・・。